読むラジオ

2024年5月31日

読むラジオ|正蓮寺伝統のはがき通信を語ろう

この記事はポッドキャスト「伊豆の国しょうれんじラジオ」2023年3月配信のエピソードの書き起こしとなります。音声版はこちらからお聞きいただけます。

【話しているひと】

渡邉元浄(以下、住職)
遠藤卓也(以下、遠藤)※住職友人、各地のお寺に詳しい

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遠藤:元浄さん、こんにちは。

住職:こんにちは。

遠藤:始まりました、「伊豆の国しょうれんじラジオ」。今日は正蓮寺の庫裏の2階からお届けしています。山の桜が本当にきれいに咲いていますね。

庫裏(くり):住職などの住まい。庫裡とも呼ぶ 

住職:薄紅というかね。伊豆というとカワヅザクラが有名ですけれど、カワヅザクラが終わった頃に咲き始める、うちのショウレンジザクラ。

遠藤:ショウレンジザクラ。

住職:すごくドラマチックなストーリーがあるんですよ。…この話は、また今度。

遠藤:今度 笑。

40年以上続く「はがき通信」

遠藤:さてさて、今日は何の話をしようかなと。仕事柄いろいろなお寺を見ていますが、正蓮寺さんの特徴的な活動として、はがきを毎月門徒さんにお送りしていますよね。

住職:そうですね、毎月400枚くらい。正蓮寺のメンバーシップに入ってもらうと、毎月お寺からはがきが1枚届くというものです。

遠藤:各地のお寺さんでもはがきの取り組みは時折見かけますが、大変だからやめてしまったり。寺報(お寺から送付されるおたより)で届けたり。

住職:メールの時代でもありますからね。

遠藤:そんな中、続いている正蓮寺のはがき。今、何号目ですか?

住職:560号くらいかな。

遠藤:おぉ。560ヶ月。

住職:40年以上。「はがき通信」という名称なんですけれど。仏教のことばやこころを震わせることばを、お檀家さんやご縁のある皆さんにお届けしたいという思いで、僕のおじいさんの頃から続いていますね。

住職が選ぶ「ことば」

遠藤:いつもことばがひとつ書いてありますが、元浄さんが選んでるんですか?

住職:そうですね。お寺の掲示板から引っ張ってくることもありますが、はがきはお檀家さんに直接届くので、誰かの顔を思い浮かべながら、このことばにしようかなと思ったり。その方から「これ僕のことでしょう」とか「私のことですね」と言われると、よっしゃ、と思いますね。

遠藤:そんなことも、、、

住職:ありましたね。僕がお参りに行ったとき、「住職さん、ちょっと見せたいものがあるので」と、仏壇の横から10年前のはがき通信を出して見せてくれて。お線香の煙で燻されていい感じの色になってるんですけれど。「私ね、このことば好きなの」って。嬉しかったなぁ。

遠藤:それも元浄さんが10年前に選んだことばですか?

住職:そうです。「会いたいって言っていいんだよ、お念仏と一緒に」って。そんな内容のことをね。…実は、庫裏の玄関にもちょこんと置いてあります。

遠藤:それは自分の中でも大事なことば?

住職:そうですね。自分自身が共感したことばや、自分が大事にしているものや、周りの人が「このことば好きなんだよね」と話してくれたことばを、この手帳に書き留めています。

遠藤:メモ帳を持ち歩いていますよね。

住職:ことばノートというか。ノートを見たときにたくさんことばが書いてあると、いろいろな人の話を聞けているなと思ったり、スカスカだとすこし忙しそうだなと振り返ったりしますね。

遠藤:自分を表すバロメーターになっているんですね。

はがきならではの質感・距離感

住職:遠藤さんは、お寺からことばが届くことをどう感じてくれています?

遠藤:そうですね、まず、はがきというものが普段届かない。ダイレクトメールはありますが、たいてい情報じゃないですか。無機質ですよね。でも、お寺からのはがきは有機的というか。

住職:なるほど。

遠藤:だから、あ、来たなって。大事ですよね。そういう意味でやっぱり嬉しいです。時折、ひとこと直筆で入っていたり。

住職:語尾を「ね」とか「よ」とか。「そう思う・・・よ!」とかね。

遠藤:そうですよね、断言しない。受け取り方はそのときの状況によりますし、人によってさまざまなので。

住職:実はそのあたり、難しいところなんです。

強いことばに曖昧なことばを入れることがいいのか悪いのか。でも、はがきというのはすごく良くて。ふっと見ると、そこに(ことばが)ポツンと置いてある。そのときの心情によって、ことばの風味がすこし変わってくるというのかな。昨日は入ってこなかったけど、今日あの人と話したことばがまさにこれだなとか。あの人にこう言えばよかったんだなとか。このはがきをあげちゃおうかな、写メして送ろうかな、とか生まれているみたいで嬉しいですね。

遠藤:ほかの人の解釈を聞くのも楽しそう。そのことばをどう受け取ったか。

住職:そう、だから玄関に置いておくのがいいかなと思っていますね。

遠藤:飾ってもらえると、元浄さんとしては嬉しいですか?

住職;そうですね。そういえばこのラジオは、その「はがき通信」に印刷されたQRコードから聴いてる人もいるんですよね。

遠藤:はい、「はがき通信」のQRコードから住職の声が聴けるという試みを始めています。

住職:新しいですね。引き続きいろいろ試していきましょう。

遠藤:今日もありがとうございました。

住職:ありがとうございました。

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書き起こし:小関優 https://yuukoseki.com
音声版(ポッドキャスト):

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