植物日記

2025年1月31日

正蓮寺植物日記|1月 はじまりのご挨拶

はじめまして、植物採集家の古長谷莉花と申します。
伊豆の国にある正蓮寺から季節の植物と「正蓮寺植物日記」をお届けすることになりました。

最初の日記は、正蓮寺の植物についてと、このお話を届けるきっかけを書かせてください。


かなしみから始まること。

正蓮寺はその名の通り、蓮の花が咲き誇る美しいお寺です。正蓮寺さんと私のご縁は、かなしみから始まりました。

とても、とても大きなかなしみは、まだ到底癒えるものではありません。大切な人とのお別れ。3年経ってもまだ信じられないのです。


あんなに一生懸命になって、父の葬式にお花を生けたのに。何度も、何度もえくぼの丘に行って父の墓にお花を供えているのに信じられない。

一年経って、ようやくお墓の前で泣かなくなりました。
二年経って、ようやく正蓮寺の美しい植物に気がつくようになりました。
三年経って、ようやくほんの少し心が動き出しました。

正蓮寺こども園に響き渡る子供の声が、自分の娘に重なったからかもしれません。
私は今、生きている。生きているのだから、やれる限りのことをしたい、と。


どんなことが良いのか、と考えたところ答えはやはり「植物」にありました。

ご紹介するのは、正蓮寺の植物だけではありません。美しい植物を保つには、人々の手入れが不可欠です。
正蓮寺に集う素敵な人々のこと。そして私たちをあたたかく見守ってくださる仏様のことも住職のげんじょうさんにインタビューしながらご紹介していきます。

正蓮寺  十二か月の植物

一月 はじまりのご挨拶 一二ヶ月の植物

二月 水仙・サンシュウ 春までの希望を紡ぐ黄色い光

三月 枝垂桜・シャガの群生・杏 待ち望んだ春の到来

四月 山桜 春爛漫

五月 藤・薔薇 どこまでも続いてゆく祈り 

六月 蓮 正蓮寺の季節

七月 紫陽花 雨の恵み

八月 百日紅 灼熱の輝き、夏の思い出

九月 栗 収穫の喜び

十月 さつまいも この手で掴む確かなもの

十一月 紅葉 最期の輝きで染まる秋空

十二月 安息 植物のお休みの時期 

かなしいはじまりの挨拶はどうだろうか、と悩みました。
けれども、この悲しみを味わわない人はこの世のどこにもいないのです。
だからこそ正蓮寺は誰にとっても「訪れたくなる場所」なのです。

ある時正蓮寺植物プロジェクトの会議をしている時に、ふと思い出した友人の言葉。
 
「伊豆の国にとても蓮の美しいお寺があるんだよ。声が素敵な住職さんがいるところで、とても美しい場所だから。きっと好きになると思う」

父が亡くなる前に、ガーデニング好きだった母が見つけてきた樹木葬のえくぼの丘。

かなしみからはじまったご縁だけれど、もしかしたら植物友達が蓮の花見に連れてきてくれたご縁もあったのではと考えています。

どの道でもいずれ、正蓮寺さんに出会う運命だった。
そして、この日記を読んでくださっている方も。

2025年の正蓮寺ではたくさんのよろこびとお愉しみの催しを準備しています。いつどのようなきっかけでも、正蓮寺があなたの「訪れたい場所」になるために。季節の植物とともにナビゲートいたします。