2025年7月18日
読むラジオ|一年中咲くハスの花!? その2
この記事はポッドキャスト「伊豆の国しょうれんじラジオ」2023年6月配信のエピソードの書き起こしとなります。音声版はYouTubeにてお聞きいただけます。(リンク)
【話しているひと】
渡邉元浄(以下、住職)
遠藤卓也(以下、遠藤)※お寺の相談役、各地のお寺に詳しい
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遠藤:元浄さん、こんにちは。
住職:こんにちは。今日もお願いします。

遠藤:前回、ハスの話はもっとあるよと仰っていましたけれど。正”蓮”寺というくらいですから、ハスの話題を続けたいなと思います。これだけたくさんのハスが咲くということで、このハスの花を何かに生かすことをやっていらっしゃるそうですね。
住職:そうですね、ハスは大きな甕(かめ)で育てていて、毎年根っこがたくさん増えていくんですけれど、植え付けきらずに、一定期間だけビニール袋に水を入れてぶら下げて、根っこを保管しておいてるんですよ。誰かほしい人いるかな…なんて思ったりして。
遠藤:ご自由にどうぞお持ちください、と。
住職:そうです。でも、いよいよちょっとこれは余っちゃうな(廃棄処分かな)と思ったとき、バケツで保管しておいたら、あれ?と思って。ふつうに育っちゃったんです。
それで、そのバケツを運んでいたときに、あれ?…これ、あの人のところに持ってっちゃおうかなと。

遠藤:笑。置きハスですね。
住職:そうそう、歩く花。それでバケツでハスの花を育てて、お貸し出しをしたりしましたね。
遠藤:貸し出す?
住職:グリーンレンタルみたいなものですね。石材店のショールームや、長岡温泉の旅館の露天風呂に置いていただいたり。朝一で一番風呂を一番咲きのハスの花とともに過ごす。極楽ですよ。

遠藤:いやあ~ハスの花とともに温泉に浸かれるなんて最高じゃないですか!
住職:そうなんですよ~
遠藤:それと気になったんですがね、ハスの鉢の下にキャスター付きの台座があって、境内をコロコロ移動させられるようになってるんですね。この工夫はオリジナルですか?
住職:オリジナルですね~。コロナ過で境内のコンクリート舗装工事をしたことがきっかけでして。鉄工所の方に作っていただきました。ハスの花のほうからあなたのところへ行きますよ、と。正蓮寺のハスは歩くんです。あなたのところに行きますので。仏さまみたいですね。仏さまのほうからやってきてくださる。如来です。

遠藤:あと驚いたのが、自動的に水が…笑
住職:そうですね笑 水やりを自動化したんです。130鉢のハスの水遣りといったら大変なんです…自動化する前は夜9時から11時くらいまでずっと水遣りしてたんですよ。ヘッドホンして好きな音楽聞きながら…でも、体力的に年齢もあってさすがに…
遠藤:なるほど。
住職:でもおかげさまでいろいろな方のご縁もあって、今は自動でマカロニホースっていうホースから毎日決まった時間に笑
遠藤:ちょろちょろ水が出てくる。
住職:時間設定してね。
遠藤:ここまでやってるお寺は他にないですね。水遣りを自動化するとか、ハスの鉢にキャスターを付けて動かせるようにするとか、モバイル化するという、そういう工夫。
住職:工夫と言えば工夫ですが、横着でもありますよ笑 ただ、肉体的な労力を減らして、人の話を聞く時間を増やしたいので、そのための計画でありアクションでしたね。

遠藤:そういえば、ご葬儀にもハスを持っていくことがあるとか。
住職:ハスの花が咲いている時期であれば、必ず境内の咲いているハスをお棺まで届けます。ハスの花を見て皆さんびっくりされますね。造花かと思ったら、本物だったと。
遠藤:なかなかないですよ。
住職:どこにもないですよね。お葬式のときにお花を入れますが、ハスの花を入れるのはお坊さんだけじゃないですかね。「今までお世話になりました」という意味合いで、お寺からお檀家さんへのはなむけといったところでしょうか。「これからも正蓮寺を守っていきます」と、そんな気持ちで棺のその人へお渡ししますね。

遠藤:やっぱり、正蓮寺の本堂にはハスが似合いますよね。
住職:最近ではいろいろなお花をお棺にたむけています。アジサイの花をお葬式に持って行ったり。チューリップ、グラジオラス、サクラ、ウメのときもあります。なるべく亡くなったときにお寺に咲いていたお花を、パチンと切って、お渡しします。買ってくるのではなくて。
遠藤:それは嬉しいですね。
住職:お葬式の思い出に残るといいなと思いますね。だから歴代の住職はいつでも花が咲くお寺にしてくれているんだろうなと。
遠藤:私も月に1度ほどこうして来るたびに、境内の表情や色合いが変わるというか。あ、この花が咲いたね、とか。
住職:そうですね。ツツジが咲いた、ツバキが咲いた、ユリが咲いた、キキョウが咲いた…と、最近ではそういうことが気になるようになりましたね。その中でもハスの花は、仏教でもシンボリックなお花です。
遠藤:伊豆のハス寺・正蓮寺ですしね。
住職:ちなみに、市役所の観光課にも元気なハスの鉢を持って行って、訪ねてこられた方に開花している姿を見てもらおうと、そんな計画もあります。
遠藤:市役所に行ったら、正蓮寺のハスに会えるかもしれない?
住職:そうですね。
遠藤:「あ、これかな」って思っていただけたら嬉しいですね。
住職:おうちでも咲かせられますからね。

住職:…闘病生活の知人がね、「僕は何もすることができなくて、庭の草花を見るのが楽しみだ」って言うものだから、「このハスの花、もうすぐ咲くので持って行ってください」とご家族に伝えて、数日後にハスの花が咲くのを見て、お浄土へ向かわれた(亡くなられた)こともありました。
遠藤:そうでしたか。
住職:その方との関係はまだ続いているんです。ハスの花の植え替えに来てくれたりもしました。その方の、見えない力、根っこの力…。今週のお寺の掲示板にも「みえないちから、ねっこのちから」と書きましたけれど。
遠藤:ハスをつながりとしてですね。
住職:ある人は平和の花だと言ったり、ある人は祈りの花だと言ったり。ありがとうの花、ごめんなさいの花、と言ったり。素敵な花だな、と思いますね。
遠藤:そうですね。ではそろそろ今日はこの辺で。
住職:ハスの花のことはいくらでも話せますので。
遠藤:また次のエピソードでよろしくお願いします。
住職:今日も聞いてくださりありがとうございました。
遠藤:ありがとうございました。
書き起こし:小関優 https://yuukoseki.com
音声版(ポッドキャスト):