植物日記

2025年12月31日

正蓮寺植物日記 | 12月 最終号 休眠の冬 長い年月を生きるために

あたたかな日々が続いていたが、今年も残すところあと一週間となり伊豆もぐっと冷え込んできた。
駆け足で「年末」が訪れ、すっかり師走の空気だ。

山茶花やチャノキの花が咲く一方、優美だった紅葉ははらり、はらりとこぼれ落ち睡蓮鉢の中で朽ちた姿さえ美しい。

季節は、確かに巡っている。
多くの人もまた、それぞれに今年の終わりを味わっている頃だろう。


休眠の冬 冬に咲く花もある

2025年1月から「正蓮寺植物日記」の連載を始めさせてもらった。

12ヶ月を通じて驚くほど多くの植物を観察することができ、驚きと喜びに満ちた時間のなかで、全10回の日記を書き綴ってきた。

 

正蓮寺  十二か月の植物

一月  はじまりのご挨拶 
二月  梅と薬草園
三月  サンシュユ・桜の開花・蓮の植え替え
四月  山桜・八重桜 藤の花 春爛漫
五月  山椒・ドクダミ・薔薇 春から夏へ
六月  蓮咲く梅雨の正蓮寺
七月  スイカ 味覚育む夏の菜園
八月  甘茶を探して岩手へ
秋号  さつまいも この手で掴む確かなもの
十二月 休眠 植物のお休みの時期 

 

目で見て楽しむ植物。
香を嗜む植物。
美味しく食べる植物。
行事を彩る植物。
薬や染料になる役立つ植物。

 

私たちの生活は、植物によって豊かに保たれていることを目の当たりにした。

試行錯誤と挑戦の連続

春には正蓮寺の八重桜でシロップを作ったり、薬草園の山椒を緑茶とブレンドしたり。
来年も楽しんでもらえる植物のことを試行錯誤。

実りのある実験だった一方で、今年の夏の少雨で植え替えたチャノキやアマチャは枯れてしまった。

はじめての試み、大きな気象の変化、書籍や論文ベースでも実際の植物の世界がその通りとは限らない。

まさに「誰が何と云ってもやってみなければわからない」世界だ。

この言葉は、静岡県伊豆の国市でピオーネを開発した日本でも有数の葡萄の育種家である故井川秀雄先生が残したくださった言葉だ。
ピオーネはイタリアで「開拓者」という意味を持つ。

 

そう感じると、私自身にも赤く燃える情熱が灯った。
「よし、腰を据えてもう一度学ぼう」と決心したのは暑い夏の日。
2歳の娘をつれ、足を運んだオープンキャンパス。

私を見て「お子様…の見学ですか?」と困惑する受付の学部生さん。
手探りの中試行錯誤し、育児と仕事、フィールドワークの合間をぬって勉強。
なんとか無事に大学院に合格した。

母であり妻であり、経営者であり、学生になる。

不安はあるけれど、誰が何と云ってもやってみなければわからない。
えくぼの丘に眠る父にも伝え、春に向けひと休憩しながら準備を進めよう。

いずれ花は咲く 生きているのだから

11月に正蓮寺の山と畑と植物を整備し守ってくれる仲村さん(こども園営繕職員)にいただいた梅の枝。
冬支度のために剪定を終え、地面に置かれていた枝を、「咲くかもしれないから、持ち帰って観察してもいいですか?」とお願いし、我が家で様子を見ることにした。

 

翌週に再び正蓮寺を訪ねると仲村さんも丁寧に枝ぶりを整えて保管してくれていた。

こんなあたたかい気持ちを持つ人の手で手入れされているから、正蓮寺の植物はいつもいつも美しい。

 

春に咲く花もあれば、暑い夏や厳しい冬に咲く花もある。
もうダメかなぁ、と半分諦めていた梅の枝も我が家の玄関で香高く咲き始めた。

 

いずれ、花は必ず咲く。
生きているのだから。


自分の人生の手入れをしよう。まるで、庭の花を咲かせるように。

連載の終わりに

あっという間の1年間、正蓮寺植物日記をお読みくださりありがとうございました。

住職であるげんじょうさんはじめ、正蓮寺のみなさまに多大なるご協力をいただきました。

素敵なご縁が広がり、心よりお礼申し上げます。
正蓮寺植物日記を参考に、季節の花ばなを楽しみながら参拝する方が一人でも増えたら嬉しいです。

あたたかな年末年始をお過ごしください。

 
植物採集家 古長谷莉花